2011年5月12日木曜日

中村勝雄② 僕はうまれつきの失敗学者? [マイナスもかければプラスに]



ぼくは重度の障害者だが、もしかすると生まれた時から失敗学者だったのかも知れない。すべての事が、何もかもうまくいかない現実からはじまっている。
小さな子どもの時から、簡単なおもちゃすら思いどおりには遊べなかった。
畑村氏は「成長過程で必ずしなければならない失敗は、必要な良い失敗」だと述べているが、障害児として生を受け、障害者として生活している事、それば失敗=うまくいかない現実との格闘ばかりだった。失敗学と障害者の生き方を比較するのは多少、次元が違うとしても、足元の現実をしっかり踏み固めて前進する力に変える事は、畑村氏の説と重ねると、新しい生き方が見えてくる。
今回、年末までの連載をさせていただく事になり、ぼくは『120㌢の視線から』として、いろんな視点で車イスに乗っていて感じる風景や出来事を記したいが、ふと考えてみると単に障害者といっても、もしかすると健康な方たちより、はるかに多様な生き方をしているかも知れない。ぼく自身も、自分について何をどこまで知っているのか厳密にはわからないのが正直なところだ。
ましてや、ほかの障害者の方たちの苦労や大変さ、そして喜びや楽しみなど推し量る事は、とうてい出来ない。
したがってこの連載も、障害者としての意見や考え方ではなく、中村勝雄から見えている風景や、今まで経験した出来事として読んでいただければ幸いだ。
以前、友人から言われた事がある。
「本当のところが聞きたいんだけど。かっちゃんは、そんなに障害が重いのに前向きっていうか、どうして明るく笑って何にでも積極的なの?」
「いやぁ、そうなっちゃうんだよね」
今なら畑村氏の失敗学を話して説明できるだろう。マイナスもマイナスをかければ不思議な事にプラスとなる。そして、ある哲学者の「人生は、どこまでも強気でいけ」という言葉が僕の心の、ど真ん中に核としてあるからだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿